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現代文読解の開発講座 (駿台レクチャー叢書)

現代文読解の開発講座 (駿台レクチャー叢書)

 現実逃避が過ぎるのは分かっているんだが、ついつい手をつけてしまった。第二問までやってみた。
 恐らく以下のような感じではないか。

†現代文が不得意な人
 語り口が優しくて読みやすい。
 解説が豊富で分かりやすい。
 雑談が勉強になる。

†現代文が得意な人
 文体がうざい。
 解説が冗長で無駄が多い。
 雑談がうざい。

 まあやっていることはほとんど田村秀行と一緒なので、問題集と割り切ればそんなに悪いものではない。が、基本的にはうざい。序文で他参考書やら清水義範やらを名前を挙げずに揶揄っているところもうざい。性格が悪いのだろう。

 それはそうと第一問は悪問である。設問を解いている分には問題がないが、これを無理やり要約しようとすると破綻が生じる。なぜなら、出題者の設問の切り取り方が強引なため、仮に設定された二つの意味段落の間に有機的な関係がないからだ。具体的には、この文章は「東京の都市形成の二つの段階」とでもいうべき内容で、第一段階の江戸にはこういう理論が、第二段階の明治東京にはこういう理論が当てはまる、ということを言っている。頭から読むとこの二段階論が重要に見えるのだが、切り取られた部分の末尾を見ると、明治東京のモザイク的な要素が面白く、これが現代の東京にも息づいている、という内容になる。すると、江戸に関する説明にはほとんど意味が無くなるのである。むしろこの問題文の不備を指摘することが重要ではないかと思われる。

 第二問はまあよく言えば論理的な文章だが、同時に加藤周一は悪文家だと思った。論理的といえば論理的だが、翻訳調の節回しが機械の書いた文章のようで気持ち悪い。頭の脱文補充に猛烈に時間がかかったのだが、その理由は「によって」が過剰に連打されることが、少し考えのある作家ならしないだろうと考えてゆえのことである。大体経済学なら産地や値段は考慮するだろ、とか筆者の定義に対して疑義が感じられるなど、これも悪問感が強い。明治大学の入試問題だがナンセンスである。「その他の性質」「捨象」のキーワードで形式的に解答できるが、本質的な根拠は「原典にそう書いてある」しかないのではないかと思われてくる。まあ、これは入試問題に対しての苦言であって霜に対する苦言ではない。